しゅごキャラ!/とても簡単で難しいこと


「きゃ……っ」

 歌唄を腕を組んで歩いていた空海は、ぐい、と地面の方に腕を引き寄せられた。見れば、それまで隣に立っていたはずの歌唄が蹲っていて。どうした、と思わず声をかけた。

「ちょっと捻っただけ。大丈夫よ」

 そう言って立ち上がろうとした歌唄は、バランスを崩して空海にもたれかかってしまった。おかしい、と思い足元を見ると。

「ヒールが折れてんじゃねぇか」

 空海に言われ、はぁ、と歌唄はため息を吐く。ほら、と屈んで背中を向ける空海に、歌唄は思わず目を丸くして、何の真似よ、と強気で言った。

「それじゃ歩けねぇだろ?」

「……平気よ」

 恥ずかしさからか、歌唄は空海の申し出を断り、歩みを進めようとした。だが、やはり高さの合わない靴では歩きづらくて、バランスが取りにくい。

「意地なんか張ってねぇで、早くしろ」

「……」

 む、と少しだけ頬を膨らませたものの、このままここで屈まれているのも通行の邪魔になるし、気が引ける。しぶしぶ、歌唄は空海の背中に張りついた。

 歌唄をおぶって、空海は難なく立ち上がり歩き出す。男の人におぶわれるのは、何年ぶりだろう。そんな昔のことを思い返しながら、歌唄はそっと空海の背中に身体を預けていた。広く、頼りになる背中。温かくて、心が安らいで。

 その等身大の安心感の中、歌唄は夢の中へ誘われていったのだった。


しゅごキャラ!/とても簡単で難しいこと■END