しゅごキャラ!/知ってるくせに


 目の前を歩くなぎひこの手を、りまは不意に掴んだ。きょとん、とした表情で、どうかした、となぎひこは怪訝そうに振り返る。

「どうもしないわよ」

「だって、手……」

「うるさいわねっ。さっさと歩きなさいよ!」

「……」

 怒鳴られても腹が立たないのは、きっと。

 恥ずかしそうに、頬が紅潮しているせいだろう。ぷ、と噴き出してなぎひこが笑うと、りまは尚更真っ赤になって手を振り払った。

「手はもういいの?」

「うるさい!!」

 意地を張っていることさえも可愛く思えて、なぎひこは優しく、振り払われた手を繋ぎ返した。

「じゃあ、僕が手を繋ぎたいから、繋いでてもいい?」

「なぎ……」

「ん?」

「……何でもない」

 慌てて顔を伏せたりまを、なぎひこはそっと抱き寄せる。

「好きだよ、りまちゃん」

「……」

 耳元で、優しく囁かれ。りまの頬を、涙が伝った。

 目の前を歩いているだけでは、何故か不安で。手を、繋いでも。それでもやっぱり、確かなものが欲しくなってしまって。

 それを理解したようななぎひこの台詞に、りまは心打たれるのだった。


しゅごキャラ!/知ってるくせに■END