しゅごキャラ!/スクロールの先に待ってた文字
「……ん」
亜夢の口から、わずかに声が漏れる。
「ここは?」
「あ、そこ……。気持ちいい」
亜夢の上に乗って、幾斗は懸命に身体を揺らす。30分ほど前から、その行為は続いているのだが。
「やめた」
ぱっと手を離して、幾斗は亜夢の上から降りた。
「え、えぇ!?」
せっかく気持ちよかったのに、と亜夢は幾斗に不平を漏らす。ベッドに横たわる亜夢の隣に座り、幾斗は深くため息を吐く。
「何でよ? もうちょっと、してよ」
「……」
甘く言われるが。これが別のことだったら、と幾斗は恨めしい目で亜夢を見つめる。
「もう、さんざんしてやっただろ。今日は終わり」
「えー」
幾斗の言葉に、亜夢は不満を隠せない。何度言っても続けてくれない幾斗を尻目に、ちぇ、を唇を尖らせて、亜夢は布団に顔を埋めた。
(何が悲しくて……)
亜夢の顔を見て、はぁ、ともう一度、幾斗は深くため息を吐いた。
「あのメール、やめろ」
亜夢の方を見て、幾斗が言う。
「あのメールって?」
「死にそうっての。もっと、ちゃんと書け」
「だって。本当に、死にそうなくらい痛かったんだもん」
まったく悪怯れる気配なく、亜夢は答える。
亜夢から、『死にそう』と一言だけ書かれたメールが届いたのが、約1時間前。
メールを見て、幾斗は亜夢の家に素早く訪れたのだが。
ベッドに横たわり、漫画を読んでいた亜夢を見て、幾斗は唖然とした。
「生理痛くらいで、俺を呼ぶな」
「仕方ないでしょ? パパやママに、そんな心配かけれないし」
ひどい生理痛で、立って歩くのもやっとだったのは事実だ。誰かに助けて欲しくて、でも両親には頼りたくなくて。
そんなとき、幾斗のことが脳裏に浮かんだ。妹がいるのだし、もしかしたら腰を揉んだりしたことがあるかもしれない、と思ったのだ。
「でも、巧かったよね? 歌唄にもマッサージしたことあるの?」
「……昔、な」
幾斗のマッサージは、本当に気持ちがよくて。あれだけ痛かった腰が、今は嘘のように軽い。
「今度、ちゃんとお礼するから」
機嫌を損ねてしまった幾斗を賺すように、亜夢は幾斗の顔を覗き込む。そんな亜夢の額に唇を落として、幾斗は悪魔の微笑みを見せる。
「お礼は、身体で払って貰うから」
「え゛」
亜夢の上に覆い被さって、幾斗は亜夢の首筋に唇を這わせる。
「ち、ちょっと……! あたし、生理中……っ」
「途中まで」
亜夢の言葉を遮るように、幾斗は亜夢に口づける。それでももがく亜夢の耳元で、騒ぐとばれるぜ、と囁くと、う、と言葉をつまらせて、亜夢は口を閉ざしたのだった。
「……っ、……」
必死に、亜夢は声を我慢していた。何故かわからないけれど、いつも以上に身体が反応している。目尻には、自然と涙が溜まっていた。
その涙を舐め上げて、幾斗は、ふ、と口元を綻ばせる。
「生理中でも、しようと思えばできるし。それに、生理中はホルモンの関係で敏感になるから。できれば、あんまり俺を呼ばないでくれ」
触れると敏感な亜夢を見ていると、理性が効かなくなるから。そうつけ加えて、幾斗は亜夢の桃色の髪に触れた。
「……うん」
幾斗の言葉に、亜夢は素直に頷く。確かに、いつもよりも敏感に反応してしまっていて、やめてほしくない、と思ってしまった。
でもそれ以上のことをするとなると、今は躊躇われてしまう。
「でも、本当に痛いんだったら、我慢しないて呼んでいいから。マッサージくらい、いつだってしてやる」
「ありがと」
優しい言葉とともに、額にキスが降ってくる。側にいれば、そういうことをしたい、と思うのは、男である幾斗にしてみれば、当然かもしれない。申し訳ないことをした、と反省するものの、次の日にはまた、懲りもせずに幾斗を呼び出していた。
「お前、俺の言ったことちゃんと覚えてるか?」
「うん。我慢しなくていいって言ったでしょ?」
「……」
甘い顔をした俺が馬鹿だった、と幾斗はため息を吐いて、亜夢の背中に馬乗りする。そうしてまた、マッサージを始めた。
(生理が終わったら……、覚えてろよ)
そう思いながらマッサージを続けていることを、亜夢は知らない。
しゅごキャラ!/スクロールの先に待ってた文字■END