しゅごキャラ!/なんで君は普段通りなの?


「俺、何か怒らせるようなことしたか?」

「……別に」

 相変わらず顔を背けたまま歌唄に言われて、さすがの空海も堪忍袋の緒が切れてしまった。

 1時間くらい前に歌唄の家に来てから、ずっと歌唄は空海と眼を合わそうとしなくて。何度が機嫌を取ってみるが、それもすべて空振り。
 原因もわからずに視線を合わせられないことは、やはり耐えられない。

「もう、嫌いになったのか?」

「……っ」

 切なそうに呟けば、歌唄は慌てて振り向いた。眉間に皺を寄せて、今にも泣き出しそうな表情をしている。

「好き……。嫌いになんてならない。なれないわよ」

 ポロポロと頬を伝う涙を拭いながら、空海はそっと歌唄に口づける。
 一瞬で離されたキスに目を丸くしている歌唄に、空海はもう一度唇を寄せた。眼を閉じて、歌唄は空海の首に腕を回す。空海も歌唄の背中に手を回して、1ミリの隙間も空けないようにきつく抱き締めた。

 しばらくそうしていたあと、どちらからともなく絡め合う舌を名残惜しそうに離して、額同士をコツンとぶつける。目と目が合って、思わず笑みが漏れた。

「何で、目を合わそうとしなかったんだ?」

「……だって」

 かぁ、と頬を赤くして、歌唄は言葉を続ける。

「き、昨日の今日で……、どんな表情していいのかわからなかったんだもの」

「は?」

「は、恥ずかしくて。空海の顔、まともに見れなかったのよ!」

「……」

 昨日。初めて、二人が結ばれた最中のことを空海は思い出す。
 普段強がっているクセに、こういう女の子らしいところもあるギャップが、尚更歌唄を可愛く魅せた。

「じゃ、早く慣れないとな」

「え?」

 勢いよく唇を寄せられて、そのままベッドに横たえられる。
 拒絶する隙も与えられず、歌唄はそのまま二人分の重みと共にベッドに沈んでいったのだった。


しゅごキャラ!/なんで君は普段通りなの?■END