しゅごキャラ!/救援という名の


「怒ってる?」

「……別に」

 ゆっくりと上っていく、観覧車のゴンドラの中。歌唄は、先ほどから一言も口を開かない空海に、軽くため息を溢した。

「悪かったよ」

 空海は向かい側に座っていた場所から立ち上がり、揺れるゴンドラの中で歌唄の隣に移動する。少しだけ傾いたゴンドラを気にするふうもなく、空海は被っていたキャップを深く被り直した。

「3ヶ月振りに会ったってぇのに、ファンから追いかけ回されてなかなかゆっくりできなかったから、腹が立った」

「だって、出かけようって言ったのは空海じゃない」

 空海の言葉に目を丸くしながら、歌唄は俯いた空海の顔を覗き込む。

「あたしは……、家の中でも事務所でも、空海と一緒にいられるならどこでもよかったんだから。何も、無理に遊園地まで出てこなくたって……」

「それじゃあ、籠の中の鳥と同じじゃねぇか」

 歌唄を向き、空海は真っ直ぐに歌唄の瞳を見つめる。

「たまの休みくらい、ゆっくり羽を伸ばしてほしかったんだよ」

「……ありがと」

 見つめ合う二人の距離が、段々と狭まってきた。

 会えなかったこの3ヶ月間、何度こうして歌唄に触れたかったことか。テレビの中では毎日会えるのに、直接会うことが難しいなんて。
 歌唄に対して嫌なところはないけれど、会える回数が少ないことだけはマイナスだった。

 それでもやっぱり、こうして触れ合っていれば。好きだなぁ、と自分の気持ちを再確認することしかできなくて。

 誰からも邪魔されることのない静かなゴンドラの中、何度も何度もキスをした。お互いの気持ちを、確かめ合うように。


しゅごキャラ!/救援という名の■END