しゅごキャラ!/君の「ほんと」を知ってるよ


「きれいよね、なぎひこの髪って」

 ストレートの黒髪に触れながら、りまがそう言った。りまとは対照的な、なぎひこの艶やかな髪。

「そう? ありがとう。本当は切りたいんだけど、まだなでしことして舞わなきゃならないことがあるからね。手をつけられないんだ」

 さら、とりまの手から梳かれていく髪が、日本人古来の女性――大和撫子を連想させた。『なでしこ』という偽名が、とてもよく似合う。どうしたってフランス人形としか思えないりまの髪質から、素直に羨ましいと思ってしまった。

「でも僕は、りまちゃんの髪の方が好きだよ」

「え?」

 頭から髪の先までをなぞるように、なぎひこは丁寧に指を絡ませていく。

「ふわふわしてて気持ちいいし。心まで温かくなるよね」

「……」

 小さい頃から、お人形さんみたい、とりまはよく言われてきた。周囲は褒め言葉として使っていたのかもしれないが、あまり好きではなかった。しゃべるな。そう、言われている気がしていたから。

「……ありがと」

 りまは、目頭が熱くなるのを感じていた。初めて言われた台詞に、思わず感動してしまって。自ずと浮かぶ涙を、止めることができなかった。

「りまちゃん」

 そっと、なぎひこはりまの頬に手を触れる。溢れる涙を親指で拭ってやりながら、徐にりまを抱き寄せた。

「大好きだよ」

「……」

 どうしてなぎひこは、こんなにもりまが欲しい言葉を捧げてくれるのだろう。りまが喜ぶつぼを、しっかりと掴んでいるような気がする。
 それがどんなにりまを幸せな気分にさせてくれているのか、なぎひこは気づいているだろうか。

「なぎひこが好きなのは、あたしの髪でしょ?」

 ばっ、と顔を背けて、りまは天邪鬼にそう言った。

「りまちゃんが好きなんだよ」

「……」

 見れば、賺すような表情を向けられていて。意地っ張りな自分を、本当に情けなく思う。でもそれに気づいてくれるのは、なぎひこだけだから。
 なぎひこは、どんなに天邪鬼なことを口にしても、そこから本意を察してくれる。りまの頭で変換できない言葉を、ちゃんと変換して理解してくれる。

「……馬鹿」

「ありがとう」

 くすくす、となぎひこは笑いながら礼を言う。馬鹿と言われて礼を言うのなんて、きっとなぎひこだけだろう。
 りま専用の変換機が、それを好きと訳しているから。他の人にはわからなくても、なぎひこだけがそれを理解してくれる。
 それが少しくすぐったくて、嬉しかった。

 小さい頃からあまり好きではなかったこの髪も、なぎひこが好きだと言ってくれるのなら、好きになれる気がした。

 ふわふわしているりまの髪に、なぎひこはそっと口づける。それからりまを見つめて微笑めば、風のようなキスを贈った。
 一度では飽き足らず、啄ばむようになぎひこはりまに触れる。その度に、りまは、好きだよ、と言われている気になってしまって。

 一つ一つのキスに、りまは幸せの余韻を感じていた。


しゅごキャラ!/君の「ほんと」を知ってるよ■END