しゅごキャラ!/この瞬間の精一杯
「ねぇ」
「ん?」
「……近い」
決して狭くはない亜夢の部屋。二人しかいないはずの空間なのに、二人の距離は限りなくゼロに近い。
「だって、寒ぃし」
「寒いんなら、布団に包まってればいいでしょ!?」
「あれ? もしかして、誘ってる?」
「んなわけあるか、エロ猫ーぉ!!」
幾斗がピッタリとくっついているせいで、気になってなかなか宿題が進まない。
イライラは募る一方なのに、どんなに怒っても幾斗は離れてくれなくて。
亜夢の堪忍袋の緒が切れる寸前、ようやく幾斗が離れてくれた。
「んじゃ、先に寝るわ」
「……」
何となく、あまりあっさりしすぎていて、それはそれで面白くない。
じっと見つめていると、布団に潜った幾斗が一言。
「問3、間違ってるぞ」
「え!?」
言われて見直すが、亜夢には間違いがわからない。わかっているのならもっと早く教えてくれればいいのに、と思ったが、亜夢は何も言わずに残りの宿題をさっさと終わらせた。
答えが間違っていようとも、努力はした。そう自分に言い聞かせて、ノートを閉じる。
部屋の電気を消して、幾斗の寝ている布団へ足を向けた。
「……」
幾斗の眠る布団に、さて素直に入るべきか。そもそもこの布団は亜夢のものなのだから、亜夢が遠慮をする必要はない。
床で寝るのは可哀想だからという亜夢の優しさで、布団で寝ることを許可したのだが。
先に布団に入るように言ったのは、やはり間違いだったかもしれない。
「きゃ……っ」
不意に布団から幾斗の手が伸びてきて、亜夢の身体を引っ張った。亜夢を抱き寄せて、ちゃんと肩まで布団を被せてくれる。
幾斗の体温で温められた布団が、なんだかいつもとは違う気がして。
亜夢は、胸が張り裂けそうなほどに高鳴っているのがわかった。
「寒いから、もっと寄れよ」
ぎゅ、と抱かれた肩が幾斗に寄る。寒いからだ、と自身に言い聞かせるが、それでも高鳴る心臓を抑えることはできなくて。
「あむのドキドキが、俺にも伝わってくる」
「う、うっさい、馬鹿猫」
どうして言わなくてもいいことを、わざわざ念を押すように言うのだろう。腹が立つものの、ドキドキしているのは事実である。
「温かいな、あむは」
「い、イクトが冷たすぎんのよ」
亜夢の体温を感じるように、はー、と息を吐き出しながら幾斗は亜夢を抱き締める。負けじと、亜夢も幾斗の背中に手を回した。
「し、仕方ないから、温めてあげる」
冷え性なのか、足先が冷たい。それに自分の足を絡めて、亜夢は温めようとする。ドキドキしすぎて、心臓が壊れそうだ。背中に回した手や絡めた足が、余計に幾斗を意識してしまって。
亜夢の強気な物言いが余計に幾斗を煽っていることを、亜夢はまだ知らない。
しゅごキャラ!/この瞬間の精一杯■END