しゅごキャラ!/存在を確かめるすべ
「んも~、ホントに唐突すぎっ!!」
文句を言いながらも、亜夢は幾斗との待ち合わせ場所に急いでいた。
夕刻に差しかかろうという頃に鳴った、亜夢の携帯電話。いつもの場所で、とだけ記された、幾斗からのメールであった。
別に、いつも幾斗と待ち合わせをしているわけではない。それなのに、亜夢には『いつもの場所』がそこしか思いつかなくて。遠目に、幾斗がベンチに座っている姿を発見し、亜夢はほっとした。
「こら、馬鹿猫」
はぁ、と呼吸を整えながら、亜夢は幾斗に声をかける。
「何なのよ、急に呼び出したりして?」
「別に」
幾斗はそれにさらっと答えてゆっくりと立ち上がり、亜夢の手を取った。
「急に、あむの顔が見たくなった」
「……っ!」
躊躇うことなくそう言われ、途端に亜夢の頬が紅潮する。そのまま、ぐい、と腕を引き寄せられて、亜夢は幾斗の胸に抱かれてしまった。
走ってきたためか高揚している亜夢の身体に、もう一人の幾斗が意識を持ち出す。子供ならではの、甘い香りに混じった汗の香り。それが、いつもの亜夢を、より一層大人にしてくれる。このまま、亜夢を抱き締めていたら。
(……やべぇな)
思い、幾斗は亜夢から離れた。きょとん、と目を丸くして、亜夢は幾斗を見つめる。
「イクト?」
ときどき、まだ子供なのだということを忘れてしまいそうになる。それほど、最近の亜夢の色香は、幾斗を惑わせてしまっていて。
優しい狼の仮面を、果たしていつまで被っていられるのか。いつ理性を失ってもおかしくないな、と幾斗自身、思わずにはいられなかった。
しゅごキャラ!/存在を確かめるすべ■END