しゅごキャラ!/痛みも涙も僕のもの


 それは、亜夢にとっては始めての出来事で。でも。

「……」

「あむ?」

 唇を離すと、不満そうな亜夢の表情が目に映って幾斗は首を傾げた。

「どうかしたか?」

「別に」

 ふい、と顔を背けて、亜夢は幾斗から視線を逸らす。幾斗は亜夢の腕を掴んで、そのまま亜夢の身体を抱き竦めた。

「どうしたんだよ、急に?」

「何でもないってば」

「嘘吐け。何でもないって表情じゃないだろ?」

「……」

 優しく覚られて、じわ、と亜夢の両目に涙が浮かぶ。

「歌唄とのこと、思い出しちゃって……」

「歌唄?」

 涙を拭いながら、亜夢が口を開く。

「イクト、昔……歌唄とキスしてたじゃん」

「してたんじゃなくて、されたんだろ?」

「で、でも……っ」

 言いかけた亜夢の言葉まで呑み込むように、幾斗は亜夢の唇を自分のそれで覆った。

「じゃああむが妬かないように、歌唄とのことを忘れさせるくらいのキスを、してやるよ」

「い……っ」

 その言葉通り、亜夢は思考を停止されられるほどのキスを、幾斗から注がれたのだった。


しゅごキャラ!/痛みも涙も僕のもの■END