しゅごキャラ!/口移しなんて当たり前?
「ありがと、わざわざ来てくれて」
こほ、と咳を溢しながら、亜夢は見舞いに来てくれた唯世にそう言った。どういたしまして、と唯世も笑顔で答える。
「思ったより元気そうで安心したよ。それじゃあ、また学校で」
「うん」
ベッドに腰かけたまま、亜夢は唯世に手を振った。そうして唯世が出て行ったドアが閉まったあと、ふぅ、と軽く息を吐き出す。
やはり、無理をして身体を起こしていたせいだろうか。先ほどよりも、身体が気怠い感じがする。
そのまま布団に潜って眠ろうと目を瞑るが、どうやら熱が上がってきているのかもしれない。喉が、焼けるように熱い。
「ん……、水」
ベッドサイドに置いてある棚の上に、水が置いてあったのを思い出す。布団の中から手だけを出して机を探るが、どうにも見つからない。
「……っ!?」
観念して布団から顔を出そうとした亜夢の顎が、何者かによって掴まれてしまった。驚く間もなく、冷たい水分が急激に口内に浸入してくる。それが水だとわかるまで、そう時間はかからなかった。
「い、イクト……?」
顎を離されて、目の前に幾斗の姿を見つける。目を丸くした亜夢を、幾斗はゆっくりとベッドに寝そべらせてくれた。一体、いつの間に部屋に入ってきたのだろう。
「イクト……」
「いいから、黙って寝とけ」
「……ん」
もう一度、幾斗は亜夢に口付けるとともに、亜夢の口内へ水を運ぶ。亜夢が水を飲んだのを確認してから、幾斗は唇を離した。
「ずっと、ここにいてやるから」
「うん」
亜夢を髪を撫でながら、幾斗が優しくそう囁く。きっと、いつものように窓から入ってきたのだろう。
幾斗が亜夢の部屋にくるのは、いつも唐突だ。今更、驚くことではない。
「イクト」
「ん?」
「……水」
ほんのりと頬を赤らめて、亜夢が幾斗にそう呟く。嬉しそうに微笑んで、幾斗は亜夢に頼まれた水を口移しで飲ませてやるのだった。
しゅごキャラ!/口移しなんて当たり前?■END