しゅごキャラ!/よく効くお薬をください
「えーと……。砂糖が大さじ1、で……」
料理の本と睨めっこをしながら、亜夢は、目の前の鍋と格闘していた。その姿を、後ろから心配そうに幾斗が見つめている。
事の起こりは、先週の日曜日。何を思ったのか、亜夢の気紛れなペットの黒猫――もとい、幾斗は、亜夢の作った肉じゃがを食べたい、と言い出した。
家庭科の授業以外で包丁など握ったことがないため、亜夢がジャガイモの皮を剥くさまは、とてもじゃないが見ていられなかったのだが。
「よし、完成♪」
嬉しそうな声が聞こえ、亜夢は幾斗の待つテーブルへ肉じゃがを運ぶ。……肉じゃが、を。
「さ、食べて」
「……」
「どうしたの? 早く食べてよ」
「……」
恐る恐る、幾斗は元々ジャガイモと呼ばれていたであろう物体を、箸で掴む。目を輝かせて、亜夢は幾斗がそれを口に含むのをじっと見ている。
思い切って、幾斗はそれを口の中に入れた。
――ぎゃり。
「ぎゃり?」
「……」
「イクト、美味しい?」
「……」
「おーい」
「……」
「返事をしろー!!」
とてもじゃないが、口の中が返事をできる状態ではない。大体、何故ジャガイモを食べて、ぎゃり、という音がするのか。そもそも、それがおかしいことに気づいてほしい。
結婚しても、亜夢に料理を作らせるのは考えた方がいいかもしれない、と幾斗は口の中のジャガイモらしき物体と格闘しながら思った。
しゅごキャラ!/よく効くお薬をください■END