しゅごキャラ!/冗談なんて通じないよ
「あむ、今日が何の日か知ってる?」
幾斗は、ベッドの上で雑誌を呼んでいる亜夢に、そう問うた。今日は9月24日。亜夢の誕生日なのだが。
「歯科技工士記念日っていって、1955年の今日、日本歯科技工士会が創立されたことを記念した日なんだぜ」
「……何、それ?」
自分の誕生日のお祝いをしてくれるのかと目を輝かせて期待したのに、その言葉はとても残念である。
俯いた亜夢の頭を、ぽんぽん、と軽く叩き、幾斗は微笑む。
「冗談。おいで、あむ」
幾斗に手招きされ、亜夢は幾斗のあとについて行く。すぐ後ろに近付くと、幾斗はそっと亜夢の手を握ってくれる。
そうして幾斗は自分の部屋を出て、すぐ隣の歌唄の部屋のドアを開けた。歌唄の部屋に入って、真っ先に亜夢の目に飛び込んだ物は――。
「おっきーぃ!!」
亜夢の身長と同じくらいの、テディベア。それが、歌唄の部屋の中心に座らされていた。
「気に入った?」
「うん!」
喜んで、亜夢はテディベアに抱きついた。知らないふりをしていても、しっかりチェックしていてくれるんだな、と改めて惚れ直しそうになる。
「ありがとう、イクト」
テディベアに抱きつきながら幾斗を見れば、幾斗は屈んで、亜夢の目の前に迫っていた。目を閉じると、そっと幾斗の唇が亜夢のそれに触れる。
「イクトの誕生日には、ちゃんとお返しするからね。プレゼント、考えててね」
「ゴムでいいよ」
幾斗がさらっと言うと、亜夢は、きょとん、とした顔つきになる。
「イクト、髪伸ばしたいの?」
「……俺が悪かった」
噛み合わない話に、幾斗は脱力してしまった。ときどき、亜夢は妙に天然なところがある。そういう天然なところも可愛いと思えるのは、やっぱり幾斗が亜夢に溺れているからなのだろう。
亜夢が『ゴム』の意味を知るのは、それからもう少しあとのことになる。
「信っじらんないっ」
「ヤることヤっといて、知らないほうが信じられねーよ」
「……っ!?」
しゅごキャラ!/冗談なんて通じないよ■END