しゅごキャラ!/平気じゃないのはたぶん僕


「わぁ。雪……」

 頭上から舞い落ちる星のような煌きを、亜夢は輝く瞳で見つめていた。

「……寒い」

 すると背中から、温かな抱擁が。

「猫だからね」

「寒いの、キライ」

 きゅ、と亜夢を抱き竦める幾斗の腕に、力が入った。

「だからって、あたしの体温、奪わないでよ」

 肩越しに、ちらっと幾斗を伺うように亜夢は後ろを向いた。ふ、と風のように。幾斗の唇が、亜夢のそれに触れる。

「……カサカサ」

「寒ぃし。亜夢が、潤して」

「ん……」

 何を言う間もなく。幾斗の乾いた唇が、亜夢の言葉を塞ぐ。

 寒気を帯びた風が、二人に吹きつける。寒いはずなのに、触れ合っていればそんなことは感じなくて。
 徐に唇を離せば、急に寒さを実感してしまう。

「……やっぱ、寒い」

「そうだね」

 しゃべると、互いの口から白い息が漏れる。

「こんな日は、湯たんぽを抱いて眠らないと」

「……それって、あたしのこと?」

 口元を綻ばせて言った幾斗を、亜夢がじっと見つめる。返事をする代わりに、幾斗は亜夢の髪に唇を寄せた。

「他の湯たんぽでも、あむは気にしない?」

「だ、だめに決まってるじゃんっ」

 慌てて否定して、はっと口元を抑える。

「じゃ、やっぱりあむだ」

「……ずるい」

 笑いながら、幾斗は亜夢の肩に頭を埋めた。幾斗だけの、幾斗限定の湯たんぽ。ときどき、スピーカーが故障したみたいにうるさくなるけれど。
 それでも、幾斗にしか聴けない甘い声は。

 絶対に手放さない、と。幾斗の亜夢への想いを、更に強めるのであった。


しゅごキャラ!/平気じゃないのはたぶん僕■END